『社会言語学入門—生きた言葉のおもしろさに迫る』

社会言語学とは言語学の一種で、言語を、社会との関わりという視点から捉える学問です。その触りの部分を紹介する本、『社会言語学入門』(東照二著) を読みました。本書では、さまざまな例を示しながら、社会言語学の全体像を解説しています。

本書では世界の様々な言語について述べられていています (主に英語と日本語が中心ですが)。
以下、私が興味深く感じた内容について述べます。

diglossia (二言語使い分け)
diglossiaとは、言葉が使われるシチュエーションによって異なる言語が使われている状態のことです。例えばアラビア圏では、教会や学校では古典アラビア語が使われ、日常生活ではモロッコアラビア語が使われています。
diglossiaに現れる二言語には主に、高い言葉と低い言葉に分けられます。高い言葉は、公的な場所で使われ、低い言葉は、日常的な用途で使われるのだそう。

ここからは私の所感ですが、日本語はdiglossiaではありませんが、公的な言葉と日常的な言葉では、用語や文法が若干異なると思うので、これも広い意味でのdiglossiaになるのかなと思います。(例えば、くだけた表現(例えば「〜してる」「食べれる」「あたし」「〜じゃねーか」)は公式な場では使われないと思います。)

コードスイッチング
コードスイッチングとは、談話中に複数言語が入り交じること。最も簡単な例では「I was とても驚いた」とか。

アメリカのあるラジオ局の放送では、英語とスペイン語が適度にコードスイッチされているそうです。
# 聞いてみたい

また、私が最近会ったフランス出身の友人から聞いた話。彼は、スペイン語は会話できるが、ポルトガル語は聞けるが話せないとのこと。だから、彼はスペイン語だけを話し、彼の友人はポルトガル語だけを話すという状態で、会話が成立するのだと言っていました (しかもこれはよくあるシチュエーションだそう)。

意識と発音の相関性
アメリカのMassachusetts州にある、Martha's Vinyard島での話。ここでは、母音/ai/の発音が、/ai/と/əi/の二種類で発音(※)されており、しかもそれが、島のアイデンティティとの相関があるそうです。島を愛して島に残りたい人は/əi/と発音し、そうでない人は英語の標準的と同じ[ai]と発音する傾向が見られたそうです。(※例えば、likeを発音すると、[laik](ライク)、[ləik](レイク)となります。)

そういえば以前、「イラク」"Iraq" の発音が、話者の政治ポリシーによって変わるという調査結果を見つけました。第二音節を、民主的な立場の人は/ah/と発音し、共和的な立場の人は/æ/と発音するそうです。(http://www.slideshare.net/dialect/the-pronunciation-of-iraq)

# ちょっとした疑問ですが、日本語でもこういった、立場によって発音が変わる例はあるか知りたいです。

社会的ステータスと文法の誤りの相関性
英語では、より社会的なステータスが高い人ほど、文法的に正しいと認識されている用法(※)を使う傾向が顕著に見られるそうです。(※ rの発音を落とさない、"the"を省略しないなど)

文法と親和度との相関
話者同士で同じ文法を使うと、話者同士の親和度も高まってくるのだそうです。特に親和度の高い会話では、文法ミス発生率も似てくるのだとか。
しかも、精神療法ではカウンセリング時に、相手と文法を合わせるように気をつけるのだそうです。


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